レジメンの切り替えおよび簡素化の管理 MANAGING REGIMEN SWITCH &
SIMPLIFICATION
長時間作用型抗HIV薬の研究
次では、現在臨床試験で検討されている長時間作用型注射2剤レジメンへの切り替え戦略に関するデータをレビューする。
FLAIR試験:DTG/ABC/3TC導入療法後の長時間作用型CAB+RPV維持療法
FLAIR試験では、HIV-1 RNA量1,000コピー/mL以上、HBsAg陰性、NNRTI耐性関連突然変異なし(K103N変異を除く)のART治療歴のない成人患者629例をこの試験の導入療法期に組み入れ、ドルテグラビル(DTG)/アバカビル(ABC)/ラミブジン(3TC)の1日1回経口投与(またはABC不耐容またはHLA-B*5701陽性の場合は、ABC以外のNRTIバックボーンの投与)を行った。20週目において、HIV-1 RNA量50コピー/mL未満を4週間超維持した患者を、この治療の継続群または経口剤カボテグラビル(CAB)30 mg+リルピビリン(RPV) 25 mg経口投与、1日1回の4週間投与への切り替え群に無作為に割り付けた(各n=283)。4週間後、切り替え群には、負荷用量として長時間作用型(LA)CAB 600 mg+LA CAB 900 mgを筋肉内投与し、その後LA CAB 400 mg+LA RPV 600 mgを4週間ごとに筋肉内投与した(n=278)。両群の患者を96週間追跡調査し、主要評価項目は48週目のFDAスナップショットによるHIV-1 RNA量50コピー/mL以上の患者の割合とした(非劣性マージン6%)。副次評価項目は、48週目のFDAスナップショットによるHIV-1 RNA量50コピー/mL未満の患者の割合、ウイルス学的失敗時の耐性、安全性および忍容性、患者報告アウトカムとした。
FLAIR試験に組み入れられた患者の年齢の中央値は34歳、22%が女性で、大部分(74%)は白人であった。
3TC:ラミブジン、ABC:アバカビル、ART:抗レトロウイルス療法、CAB:カボテグラビル、DTG:ドルテグラビル、HBsAg:B型肝炎ウイルス表面抗原、IM:筋肉内投与、LA:長時間作用型、PO:経口投与、Q4W:4週ごと、QD:1日1回、RAM:耐性関連突然変異、RPV:リルピビリン
FLAIR試験:48週目および96週目の有効性(ITT-E集団)
48週目の主要評価項目(HIV-1 RNA量50コピー/mL以上の患者の割合)については、LA CAB+LA RPVのDTG/ABC/3TC継続に対する非劣性が示された[調整した差:-0.4%(95%CI:-2.8~2.1%)]。また、48週目の副次評価項目(HIV-1 RNA量50コピー/mL未満の患者の割合)においても、LA CAB+LA RPVのDTG/ABC/3TCによる ART継続に対する非劣性が示された[調整した差:0.4%(95%CI:-3.7~4.5%)]。
96週目の結果より、切り替え後に奏効が持続すること、およびLA CAB+LA RPVのDTG/ABC/3TCによるART継続に対する非劣性が確認された。
予想どおり、CAB+RPV群の方がDTG/ABC/3TCによる ART継続群よりAE発現率が高かった。最もよくみられたAEは、上咽頭炎、頭痛、上気道感染および下痢であった。96週目までに、CAB+RPV群34%(n=95)、DTG/ABC/3TC群12%(n=33)に治療関連AEが認められ、最もよくみられた治療関連AEは頭痛および発熱であった。中止に至ったAEは、それぞれ4%(n=12)および1%(n=4)であった。CAB+RPV群の治療関連AEの大部分(96%)はgrade 1または2であった(注射部位反応を除く)。
96週目までに、CAB+RPV群の283例に12,552回の注射が行われ、そのうちの24.7%に注射部位反応(ISR)が認められた。ほとんどすべて(99%)のISRがgrade 1または2であり、その持続期間の中央値は3日であった。6例がISR(3例)または注射に対する不耐性(3例)のため試験を中止した。
また、この試験の一環として、HIV治療の満足度に関するアンケート調査をしたところ、48週目にCAB+RPV群91%がLAの治療を好んでいた。96週目にLA CAB+RPVの投与を受けていた患者が報告した治療満足度には有意に大きな改善がみられた(96週目におけるHIV Treatment Satisfaction [HIVTSQs]スコアの変化量の平均値の差2.3%、95%CI:1.1~3.5%、P<0.001)。
ATLAS試験として知られる同様の試験では、ウイルス学的失敗歴がなく、6ヵ月以上HIV-1 RNA量50コピー/mL未満が持続し、安定したART(一次レジメンまたは二次レジメン)を受けている成人患者を対象に、LA カボテグラビル(CAB)+LA リルピビリン(RPV)の2剤併用療法をベースラインARTの継続と比較評価した。患者を、導入期にCAB(30 mg)+RPV(25 mg)経口投与1日1回の2週間投与群またはベースラインART継続群に1:1の割合で無作為に割り付けた。2週間後、CAB+RPV群に無作為に割り付けられた患者は、LA CAB 400 mg筋肉内投与+LA RPV 600 mg筋肉内投与の4週ごと投与に移行した。両群の患者を48週目まで追跡調査した。
ATLAS試験でも、LA CAB+LA RPVのベースラインARTの継続に対する非劣性が確認された。安全性と治療満足度に関するアウトカムも同様であった。
3TC:ラミブジン、ABC:アバカビル、AE:有害事象、BL:ベースライン、CAB:カボテグラビル、DTG:ドルテグラビル、ISR:注射部位反応、ITT-E:治療の意図、LA:長時間作用型、NI:非劣性、RPV:リルピビリン、VF:ウイルス学的失敗
ATLAS試験:ウイルス学的抑制が得られている成人患者における長時間作用型CAB+RPV(IM)への切り替え vs 3剤ARTの継続
長時間作用型(LA)ARVは、治療歴のない患者集団、維持療法の切り替え戦略、およびHIV感染予防戦略において検討されている。ATLAS試験では、ウイルス学的失敗歴がなく、安定したART(一次または二次レジメンのいずれか)を受けており、6ヵ月以上HIV-1 RNA量が50コピー/mL未満である成人患者を対象に、LA カボテグラビル(CAB)+LA リルピビリン(RPV)の2剤併用療法をベースラインARTの継続と比較評価した。患者を、導入期にCAB(30 mg)+RPV(25 mg)経口投与1日1回の2週間投与群またはベースラインのART継続群に1:1の割合で無作為に割り付けた。2週間後、CAB+RPV群に無作為に割り付けられた患者は、LA CAB 400 mg 筋肉内投与+LA RPV 600 mg筋肉内投与の4週ごと投与に移行した。両群の患者を48週目まで追跡調査した。主要評価項目は48週目のFDAスナップショットによるHIV-1 RNA量50コピー/mL以上の患者の割合とした(非劣性マージン6%)。副次評価項目は、48週目のFDAスナップショットによるHIV-1 RNA量50コピー/mL未満の患者の割合、ウイルス学的失敗時の耐性、安全性および忍容性、患者報告アウトカムとした。対照群の患者は、52週目以降の拡張期間にLA CAB+LA RPV投与に移行することが可能であった。
ATLAS試験に組み入れられた患者の年齢の中央値は42歳、3分の1が女性であった。3分の2をわずかに超える患者が白人であった。これまでARTを受けていた期間の中央値は4年であった。半数は非核酸系逆転写酵素阻害剤、3分の1はインテグラーゼ阻害剤、17%はプロテアーゼ阻害剤を含むレジメンの投与を受けていた。
3TC:ラミブジン、ABC:アバカビル、CAB:カボテグラビル、DTG:ドルテグラビル、LA:長時間作用型、RPV:リルピビリン
ATLASおよびFLAIR試験: LA CAB+LA RPV投与期間中に発現した耐性
ATLAS試験およびFLAIR試験では、ウイルス学的失敗が認められた時点で検体を採取し、ジェノタイプ解析を行った。このスライドは、ウイルス学的失敗が認められた6例から得られたデータを示している。ほとんどがロシア出身者であった。
投与期間中に耐性の発現が認められた患者は少なく、560例中6例であった。リルピビリンを失敗した患者ではE138、K101、V108変異が、INSTI(カボテグラビル)を失敗した患者ではL74、Q140、Q148、N155変異が認められた。
CAB:カボテグラビル、LA:長時間作用型、RAM:耐性関連突然変異、RPV:リルピビリン
ATLAS-2M試験:ウイルス学的抑制が得られている成人患者における長時間作用型CAB+RPV(IM)の2ヵ月ごと投与 vs 1ヵ月ごと投与への切り替え
ATLAS-2M試験では、安定したARVレジメンを受けておりウイルス学的抑制が得られている患者1,045例を、長時間作用型(LA)注射カボテグラビル(CAB) +リルピビリン(RPV)のレジメンを4週ごと(Q4W)または8週ごと(Q8W)に投与する群に無作為に割り付けた。
この試験には、ATLAS試験でLA CAB+LA RPVを Q4Wまたは標準治療としてのARTのいずれかの投与を受けていた成人患者、ならびにATLAS試験に登録されておらず、標準治療のARTを受けていた成人患者を組み入れた。ATLAS試験から移行する患者は、LA CAB+LA RPVをQ4Wまたは現在のARTレジメンを少なくとも52週目まで受けており、スクリーニング時にHIV-1 RNA量が50コピー/mL未満である者とした。標準治療を受けていて、ATLAS試験に組み入れられていなかった患者は、スクリーニング前に6ヵ月間以上同じレジメン(一次治療または二次治療としての多剤併用ART)の投与を中断することなく受けており、スクリーニング前の12ヵ月間に血漿中HIV-1 RNA量が50コピー/mL未満が2回以上(1回はスクリーニング前6~12ヵ月、もう1回はスクリーニング前6ヵ月以内)認められた者とした。ウイルス学的失敗歴があるか、過去のジェノタイプ検査で主要なINSTI耐性またはNNRTI耐性関連変異(K103N変異を除く)を認めた患者は除外した。
患者をCAB+RPVの投与歴に基づき層別化後、LA CAB 600 mg IM+LA RPV 900 mg IMの2ヵ月ごと投与(Q8W)またはLA CAB 400 mg IM+LA RPV 600 mg IMの1ヵ月ごとの投与群に無作為に割り付けた。両群ともにLAの薬剤による治療を受けたことがない患者には、注射剤による治療への移行前に、経口剤CAB 30 mg+RPV 25 mgを1日1回4週間投与した。
この試験の主要評価項目は、48週目のFDAスナップショットによるHIV-1 RNA量50コピー/mL以上の患者の割合であった(非劣性マージン4%)。副次評価項目は、48週目のFDAスナップショットによるHIV-1 RNA量50コピー/mL未満の患者の割合、ウイルス学的失敗、ウイルス学的失敗時の耐性、安全性および忍容性、治療の好みに関する患者報告アウトカムであった。
ITT-E集団の患者の年齢の中央値は両群とも42歳であり、27%が女性で(出生時の性別に基づく)、大部分(73%)は白人であった。
ART:抗レトロウイルス療法、CAB:カボテグラビル、IM:筋肉内投与、ITT-E:治療の意図、LA:長時間作用型、PO:経口投与、Q4W:4週ごと、Q8W:8週ごと、QD:1日1回、RPV:リルピビリン、SoC:標準治療、VF:ウイルス学的失敗
ATLAS-2M試験:CAB+RPV(IM)Q8WはQ4Wに対して非劣性
主要評価項目(48週目のHIV-1 RNA量50コピー/mL以上の患者の割合)では、8週ごと(Q8W)のLA CAB+LA RPV は4週ごと(Q4W)のレジメンに対する非劣性が確認された[調整した差0.8%(95%CI:-0.6~2.2%、非劣性マージン4%)]。主な副次評価項目(48週目のHIV-1 RNA量50コピー/mL未満の患者の割合)でも、Q8WのLA CAB+LA RPVは Q4Wのレジメンに対する非劣性が確認された[調整した差0.8%(95%CI:-2.1~3.7%、非劣性マージン-10%)]。
ウイルス学的失敗がQ8W群で8例、Q4W群で2例に認められた。ベースライン時の末梢血単核球を用いたQ8W群のHIV-1 DNA検査の事後解析では、5例が既存の主要なRPV耐性関連突然変異(E138A、Y188L、Y181Y/C、H221H/Y、E138E/A、Y188Y/F/H/L)を有し、1例が既存の主要なINSTI耐性関連突然変異(G140G/R)を有し、5例がL74I遺伝子多型(サブタイプA/A1 3例、サブタイプC 1例、complexサブタイプ 1例)を有していた。その後の完全な活性を有する抗HIV薬を用いた経口ARTによる治療により、ウイルス学的失敗が認められた10例中9例ではウイルスの再抑制が得られた。1例は、PIベースのARTの遵守が不良であった。ウイルス学的失敗が認められた10例全例において、ウイルスはドルテグラビルに対する感受性(フェノタイプ)が残っていた。
レジメンの忍容性は良好で、両群で認められた有害事象(AE)は同様であった。全体では、薬剤関連AEの96%がgrade 1~2であった。注射に関するAEの約4分の1が注射部位反応(ISR)であった。ISRのほとんどすべて(98%)がgrade 1または2であり、ISRの持続期間の中央値は3日であった。注射関連の理由により試験を中止した患者は2%未満であった。
全体として、ほぼすべての患者が経口投与による治療よりもLA CAB+RPVのIMによる治療を好み、LA CAB+LA RPVのQ4WのIMを受けたことがあるQ8W群の94%がQ4W投与よりもQ8W投与の方を好んだ。
AE:有害事象、CAB:カボテグラビル、CVF:ウイルス学的失敗、DTG:ドルテグラビル、IM:筋肉内投与、ISR:注射部位反応、ITT-E:治療の意図、LA:長時間作用型、Q4W:4週ごと、Q8W:8週ごと、RAM:耐性関連突然変異、RPV:リルピビリン、VF:ウイルス学的失敗