抗HIV薬療法の概要 OVERVIEW OF ANTIRETROVIRAL
THERAPY
ウイルス学的抑制が得られている患者に対するARTの切り替えや簡素化の時期
一部のHIV感染者ではARTレジメンの変更が必要
抗HIV薬による副作用や毒性の発現は、臨床の場においてよくみられる。
HIV感染者は、生涯にわたり抗HIV薬を服用する可能性があるため、代謝性合併症、アドヒアランスの低下、アドヒアランス不良によるウイルス学的失敗を避けるために、副作用と毒性に対処しなければならない。毒性プロファイルが改善し、投与スケジュールが容易になり、服用錠数が少ない新しい薬剤が登場すると、医療提供者は、個々の薬剤を変更するか、レジメン全体を変更するという問題に直面することが多い。
治療レジメンの切り替えに最適な時期は明らかではないが、多くの研究でARTレジメンで6ヵ月以上ウイルス学的に抑制されている患者に対するレジメンの切り替えについて調査してきた。
治療ガイドラインによると、現在のレジメンでウイルス学的に抑制されている患者に対する治療の切り替えに関して考慮される理由には下記が含まれる:
- •忍容性を改善する
- •短期または長期毒性を軽減する
- •食事または水分摂取の必要量条件を変える
- •薬物相互作用を最低限に抑える
- •妊娠に備えて、または妊娠中の胎児に対する安全性を考慮してARTレジメンを最適化する
- •薬剤費を削減する
- •錠剤数の負担または服薬頻度を減らす
治療歴が長いHIV感染者では、毒性の低い簡素化されたレジメンへの切り替えは、今でも困難である。単純に1つの薬剤の変更はできるかもしれないが、できない可能性もある。新しいレジメンへの計画前に、HIV感染者の治療歴、耐性検査の結果、治療忍容性、薬物相互作用について徹底的に調査する必要がある。
ARTの切り替え:クラス内の切り替えと別のクラスへの切り替え
ある薬剤を同じクラスの別の薬剤に変更することで、毒性の低減、投与スケジュールの改善、新規配合剤による錠剤数の負担の軽減の可能性がある:
例えば、毒性の発現率が高く投与頻度が高い薬剤を、毒性プロファイルが改善され、投与頻度が低い薬剤に変更することは理にかなっている。
3剤レジメン
クラス内の切り替え:
- 薬剤耐性のない患者を対象にこれまでに研究されてきたクラス内の切り替え戦略の例としては、以下のものがある:
- •TDFまたはアバカビル(ABC)からTAFへ
- •RALからDTGへ
- •DTG、EVG/cまたはRALからBICへ
- •エファビレンツ(EFV)からRPVへ、またはドラビリン(DOR)へ
- •rtv(リトナビル)またはコビシスタットを併用するアタザナビル(ATV/cまたはATV/r)からブースターを併用しないATVへ
- ※ABC/3TCと併用した場合
別のクラスへの切り替え:
- 前述したように、事前に実施する耐性検査結果は、これらの切り替えの決定の際に非常に参考になる。これまでに、以下のものについて、別のクラスへの切り替えに関する試験が実施されている:
- •rtv(リトナビル)またはコビシスタットを併用するPIをINSTI(例えばDTG、BICまたはEVG)に切り替える。
- •rtv(リトナビル)またはコビシスタットを併用するPIをRPVまたはDORに切り替える。
- •NNRTIをINSTIに切り替える。
- •rtv(リトナビル)またはコビシスタットを併用するPIをマラビロク(MVC)に切り替える。
- ※MVCに切り替える場合、ウイルス学的抑制が得られている患者に対するコレセプターCCR5阻害剤の使用に関しては、プロウイルスDNA指向性の検査結果を用いて決定できる。