抗HIV薬療法の概要 OVERVIEW OF ANTIRETROVIRAL
THERAPY

はじめに

抗レトロウイルス療法(ART)は、毒性のある単剤療法(ジドブジン)から始まり、この30年間で、忍容性が高く有効性も高い2剤または3剤併用療法へと大きく進化した。それに伴いARTの目標は、疾患の進行を遅らせることからHIVウイルス複製の抑制を維持することへと変化した。現在、HIVウイルスの生活環の各段階を標的とする7クラス20種類以上の抗HIV薬が使用されている。

一次治療としてのARTでは、核酸系逆転写酵素阻害剤(NRTI)1~2剤とThird agentとして別のクラスの薬剤[通常、インテグラーゼ阻害剤(INSTI)]を併用する。非核酸系逆転写酵素阻害剤(NNRTI)やブーストプロテアーゼ阻害剤(PI)を併用することは少ない。

世界保健機関(WHO)のガイドライン、米国の治療ガイドライン、欧州の治療ガイドラインはそれぞれ、CD4陽性細胞数にかかわらず、すべてのHIV感染者にARTを行うことを推奨している。一次治療としてのレジメンは、用量、臨床的特徴、耐性、併存疾患、許容できる副作用、費用および患者が服用する可能性のある他の薬剤との薬物相互作用を考慮して、患者の特性に基づいて決定しなければならない。必要な場合は、治療忍容性の観点から、ウイルス学的抑制を達成した患者のARTを変更することができる。