HIV伝播のメカニズム Mechanisms of
HIV Transmission

母子感染

  • 米国の小児ではエイズへの進行が依然として認められ、その大半はHIV母子感染例である
  • HIV母子感染率は、効果的な戦略により大幅に減らすことができる
  • 授乳を介したHIV伝播のリスクは感染源への累積曝露と関連している
  • 資源が乏しい国におけるARTを受けていないHIV感染女性が授乳する場合の母子感染リスク

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米国の小児ではエイズへの進行が依然として認められ、その大半はHIV母子感染例である

小児のHIV感染症は、進行が速く死亡率が高い。抗レトロウイルス療法を実施しなければ、1歳まで生存できるのはHIVに感染した乳児のわずか65%であり、2歳まで生存できる幼児は半数以下である。

黒人/アフリカ系アメリカ人の小児は、その他の人種や民族の小児よりも免疫学的ステージ3のHIV感染症(エイズ)の罹患率が高い。各人種・民族における免疫学的ステージ3のHIV感染症(エイズ)の小児の割合は年々変化しているが、黒人/アフリカ系アメリカ人の小児の割合は常に高い。

参考文献

  1. Centers for Disease Control and Prevention. HIV Surveillance Report, 2018; vol. 30. https://www.cdc.gov/hiv/pdf/library/reports/surveillance/cdc-hiv-surveillance-report-2018-preliminary-vol-30.pdf. Published November 2019. Accessed May 14, 2021.
  2. Wahl A et al. Human Breast Milk and Antiretrovirals Dramatically Reduce Oral HIV-1 Transmission in BLT Humanized Mice. PLoS Pathogens. 2012 Jun 14;8(6):e1002732. doi: 10.1371/journal.ppat.1002732.

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HIV母子感染率は、効果的な戦略により大幅に減らすことができる

HIV母子感染は、妊娠中、分娩時または授乳中に発生する可能性がある。授乳せず、ARTも受けていない場合の母子感染リスクは最大約25%である。授乳により、感染する可能性はさらに最大20%高くなる。

米国では、妊婦HIVスクリーニング検査の実施、妊娠前、妊娠中、産後の抗HIV薬服用、必要に応じた予定帝王切開の実施、授乳の回避により、HIV母子感染率は2%未満に大幅に減少している。しかし、これらの感染予防対策は世界各地で利用できるわけではなく、サハラ以南のアフリカなどの地域では、エイズは依然として乳児死亡の主な原因の一つとなっている。

ART:抗レトロウイルス療法、MTCT:母子感染

参考文献

  1. Taylor AW, Nesheim SR, Zhang X, et al. Estimated perinatal HIV infection among infants born in the United States, 2002-2013. JAMA Pediatr. 2017;171(5):435-442.
  2. WHO, UNICEF, UNFPA and UNAIDS (2008) HIV transmission through breastfeeding: a review of available evidence: 2007 update. Geneva: the World Health Organization.

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授乳を介したHIV伝播のリスクは感染源への累積曝露と関連している

1日授乳したときのHIV感染リスクはきわめて低い(確率は授乳1日あたり0.00028)1。しかし、数ヵ月から数年間にわたり何リットルもの母乳を与え(年間約250リットル)、何らかの感染予防対策を講じていない場合、HIV感染妊婦から出生した乳児の5~20%が、最終的に母乳を介してHIVに感染すると考えられる2。HIV感染者である女性の母乳中のHIV粒子(遊離ウイルス)とHIV感染細胞(cell-associated virus)の濃度が高いと、授乳中のHIV伝播のリスクが高まる。

母乳中の遊離HIVまたはHIV感染細胞が10倍に増加すると、感染リスクが3倍に増加するという報告があるが、授乳中に遊離HIVおよび/またはcell-associated virusが伝播するか否かについては依然として明らかになっていない。さらに、母乳の分泌時期(初乳、移行乳、成乳)によって、遊離HIVおよびcell-associated virusの伝播の頻度が異なるかについては分かっていない。米国小児科学会は、母親のウイルス量や抗レトロウイルス療法の有無にかかわらず、HIV感染者である母親は乳児に母乳を与えないよう推奨している3

参考文献

  1. Richardson BA, John-Stewart GC, Hughes JP, et al. Breast-milk infectivity in human immunodeficiency virus type 1-infected mothers. J Infect Dis. 2003;187 (5):736–740.
  2. Wahl A et al. Human Breast Milk and Antiretrovirals Dramatically Reduce Oral HIV-1 Transmission in BLT Humanized Mice. PLoS Pathogens. 2012 Jun 14;8(6):e1002732. doi:10.1371/journal.ppat.1002732.https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3380612/#ppat.1002732-Newell1
  3. Committee on Pediatric AIDS. Infant Feeding and Transmission of Human Immunodeficiency Virus in the United States. Pediatrics. 2013;131:391396.

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資源が乏しい国におけるARTを受けていないHIV感染女性が授乳する場合の母子感染リスク

エイズ流行に関する初期のデータより、HIV感染者である母親が授乳する場合のリスクが浮き彫りにされた1。しかし、ARTの利用が可能になったことで、長年にわたり蓄積されたエビデンスを踏まえ、資源が乏しい国での授乳に伴うリスクと母乳育児のメリットが均衡するようになった。そのため、WHOは、資源が乏しい状況では、HIV感染者である母親に対して出生後6ヵ月間は母乳のみを与え、その後も少なくとも12ヵ月間は補完食と併用しながら授乳を継続するよう推奨している2。さらに、伝播リスクを低減させるために、可能な限りARTを実施すべきであるとしている。

参考文献

  1. De Cock KM, Fowler MG, Mercier E, et al. Prevention of mother-to-child HIV transmission in resource-poor countries: translating research into policy and practice. JAMA. 2000;283:1175-1182.
  2. World Health Organization. Infant feeding for the prevention of mother-to-child transmission of HIV. Available at:https://www.who.int/tools/elena/interventions/hiv-infant-feeding#:~:text=Mothers%20known%20to%20be%20HIV%2Dinfected%20(and%20whose%20infants%20are,thereafter%2C%20and%20continue%20breast%20feeding.Accessed May 14, 2021.

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