2023年07月26日
子宮内HIV治療により、男児5名がART中断後にウイルス量を検出限界未満に維持
HIV treatment in the womb helped five baby boys stay undetectable off AR
IAS 2023で発表された南アフリカの研究により、HIV感染児として生まれた男児5名において、その後に抗レトロウイルス療法(ART)を中止したにもかかわらず、ウイルス量が検出限界未満のレベルで維持されていたことが判明した。本研究により、抗レトロウイルス薬は、子宮内であっても、HIV陽性の小児に対する治療として有効性を発揮し始めることが示され、また、治療後のコントロールには性差があることが強調されている。
過去10年間に、いわゆる治療後コントローラーとなった小児の症例が報告されている。つまり、短期間の抗レトロウイルス療法(ART)後に、数ヵ月間あるいは数年間にわたりウイルス量を検出限界未満に維持できることが多い。
KwaZulu-Natal大学のGabriela Cromhout博士は、小児における治療後のコントロールは、これまで考えられていたよりも一般的である可能性があるという仮説を立てた。 2015年、Cromhout博士らは、縦断的コホート研究を立ち上げ、現在、HIV感染児を出産した母親281名が参加している。これらのHIV感染児は出生時から継続的にモニターされている。
研究対象の母親の多くはHIV感染と診断され、妊娠後期にARTを開始していたが、アドヒアランスに問題がある者もいた。それにもかかわらず、対象乳幼児の92%は、出生前に母親から胎盤通過によりARTの一部を受けていた。
南アフリカでは、出生時からHIVに感染している乳児のウイルス量は、ART前の時代に比べて現在では有意に低く、特に強力な薬剤であるドルテグラビルをベースとするレジメンへの切り替え以降はさらに低くなっている。このコホートでは、出生時の平均ウイルス量は、ブーストしたロピナビルを投与した母親の出生児では6,950であったが、ドルテグラビルを投与した場合には1,700であり、さらに男児では1,000を下回った。
全新生児がARTを開始したが、多くの乳幼児において治療に対するアドヒアランスに一貫性がなかった。出生から3年後、母親および乳幼児の37%が本研究から脱落し、23%は検出可能なウイルス量が持続していた。しかし、40%はウイルス量が抑制されており、そのうち19%は「一時的上昇」がなく、ウイルス量は検出限界未満(20未満)を維持していた。
本研究により、治療後のコントロールには性差があるというエビデンスが得られた。乳幼児5名では、生後2ヵ月からARTの投与を受けていないか、受けていたとしてもほとんど受けていないにもかかわらず、ウイルス量は20未満に維持されていた。本研究の対象乳幼児の60%が女児であったが、上記5名は全員が男児であった。
男児5名のうち検出限界未満のウイルス量が最も長く維持された1名は、生後40ヵ月(3歳4ヵ月)でART投与を中止しており、現在は5歳になっている。他の4名はARTを再開したが、3名は現在、解析的治療中断研究に参加しており、事前に定められた期間、注意深く監視しながらARTを中止する予定である。
女児と男児では感染するウイルスの種類が異なっていた。女児におけるHIVは1型インターフェロンに対して抵抗性を示すか、感受性が低い傾向があったため、このタイプのウイルスに対しては自然免疫防御機構があまりうまく働かないと考えられる。男児のHIVに対しては1型インターフェロンが効く傾向があったため、免疫防御機構がうまく働くと思われる。
1型インターフェロンの反応が、男児が感染するウイルスの種類に影響を与えているのであれば、この反応をさらに強化する治療法により、感染する可能性のあるウイルスの範囲を狭め、少なくとも小児では予防効果を発揮できる可能性がある。
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