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2023年07月26日

黄信号:ウイルス量は抑制されているが検出可能な場合のWHOの見解
An amber light: the WHO position when viral load is suppressed but detectable

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Dr Lara Vojnov at IAS 2023. Photo by Roger Pebody.

世界保健機関(WHO)が発表し、IAS 2023で発表された文書によると、ウイルス量は抑制されているが検出可能な人がHIVを感染させるリスクは、「ほぼゼロか無視できる」

WHOのGlobal HIV, Hepatitis and STI Programmeの診断学顧問であるLara Vojnov博士が、WHOの新しい方針の概要「個人の健康増進と感染減少におけるHIVの抑制の役割」を発表した。

この概要では、ウイルス量検査結果を3つのカテゴリーに区別している。「抑制されていない」(1,000を超える)、「検出不能」、これは個々の検査の感度に依存し、0~ 200までの値を意味する。中間のカテゴリーである「抑制されている」、これは検査で HIV が検出されるが、定量できないほど低いレベル(1,000未満)である。

これまで、ウイルス量検査は複雑すぎ、低所得の環境では高価すぎると考えられていた。症状に応じて治療法を変更することが、費用対効果が高いと考えられていた。しかし、患者が発病するまで治療法の変更を遅らせた結果、薬剤耐性が生じ、二次治療の選択肢が著しく制限され、命を失うことになる。

ウイルス量検査をHIV治療とケアの標準として、すべての状況において導入することが緊急に必要である。血漿ではなく、乾燥血液スポット標本を使用することで、低中所得国におけるウイルス量検査の規模拡大の障壁となっていた多くの物流上の困難を克服できる。

しかし、これらの検査において明らかに抑制されていないウイルス量の臨床閾値は、およそ1,000コピー/mLである。これは、使用される検体が小さくなっているためで、陽性で1,000未満だが定量できないという結果に至る。言い換えると、この検査では厳密な数値が得られない。

ウイルス量がこの範囲であることは多くはない。ウイルス量が200に近いのは一時的で、「下降中」(治療が初めての人でウイルス量が低下しているとき)、または「上昇中」(治療が失敗している、または失敗につながる可能性のあるアドヒアランスの問題がある場合)であることが多い。

したがって、新しい「抑制されている」のカテゴリーは、ちょうど黄信号のように、将来の問題を警告している可能性がある。「抑制されているが検出可能」な場合、WHOは、アドヒアランスカウンセリングを強化すること、ウイルス量検査を3ヵ月以内に繰り返すことを推奨している。結果が依然として抑制されているが検出可能である場合は、低レベルの耐性、または治療の失敗が迫っていることを示している可能性があり、レジメンを変更すべきである。

感染について、Vojnov氏は、U=Uの元々のメッセージは変わっていないことを強調した。それは、「ウイルス量が検出不能なHIV感染者から性交渉の相手にHIVが感染するリスクはゼロである」。

Vojnov氏らは、「抑制されている」カテゴリー(1,000未満だが200は超えている可能性がある)の感染リスクを定量化するために、ウイルス量を測定しそれを感染イベントと関連付けた研究を再検討した。この総説は、先週The Lancet誌に発表されたが、最後に記録されたウイルス量が1,000未満だった感染イベントはわずか2件だった(617件中1件と872件中1件)。

「ウイルス量が抑制されているHIV感染者から性交渉の相手に感染するリスクは、ほぼゼロか無視できる」と、総説は結論付けている。

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